賃金業規制法施行直後に迎えた時代

1970年代半ば以降の時期は、それまで順調な拡大を続けてきた消費者金融業界にとって、さまざまな意味で波乱と試練のときとなった。

新規参入業者の増加による競争の激化は、残念ながら過重な債務を負うお客さまを増やす結果となり、メディアによる厳しい"サラ金批判"を招くことにもなった。この間、消費者金融業界の健全化を目的に、「貸金業規制法案」と「出資法一部改正法案」が国会に上程され、幾度かの廃案と継続審議を経た末に83年(昭和58年)4月に2法が成立。同年11月に施行されるに至る。市場の混乱を是正するためにも、私たち消費者金融業者として心待ちにしてきた法律の制定だったが、その内容は業者に厳しい行為規制を課すものでもあった。

とはいうものの貸金業規制法は、消費者金融業者に対して業務のあるべき形について明確な指針を与えてくれるものであり、これを機に、各社では法律に基づいた業務体制の構築が図られ、業界団体等でも会員企業の社員に対する各種研修体制が整備されるなど、健全で遵法的な業界秩序づくりが大きく進むこととなった。もう少し貸金業規制法の制定が遅れていたら、消費者金融業界はもっと大きな社会批判にさらされ、より大きなダメージを受けることとなっていたに違いない。その意味では、まさにぎりぎりのタイミングでの法制定だったと思う。しかし同年6月、大蔵省(当時)は金融機関に対し「消費者金融会社への融資を抑制し、あくまで慎重に」という銀行局長通達を発出する。これを機に金融機関によるこの業界への融資引締めが始まり、翌84年(昭和59年)には多くの中堅消費者金融会社が破綻。大手各社においても、初めての融資残高の大幅減少という厳しい試練との直面を余儀なくされました。このときは、各社それぞれに大きな傷を負いながらも必死の経営努力を重ね、どうにか難局から脱出することができた。業務合理化のために、管理センターなどの名の下に、債権管理に集中して携わる専門部署を各社が立ち上げはじめたのもまさにこの時期だ。

株式上場の意義

各社の地道な努力が実を結び、消費者金融業界は1980年代半ば以降から再び拡大を始めた。このころから大手各社では、資金調達手段の充実と業界イメージの向上を目的に、株式の公開が検討されるようになっていった。当社では93年(平成5年)秋に店頭公開を果たし、翌年12月に東証二部、96年9月には東証一部銘柄の指定を受けた。消費者金融会社から一部上場企業が誕生したことは、業界イメージの向上にもきわめて大きな役割を呆たしたものと思う。両親に消費者金融会社への就職を反対された若い社員が、「上場企業に勤務している」と胸を張って言えるようになる喜び。そしてお客にも、社会的信用のある企業と取り引きしていることを実感していただけるようになった。

またいうまでもなく、資本市場においてその存在が認められたことは、経営面においても重要な意義がある。資本市場から低コストの資金を調達することで貸出金利の引下げが可能になり、それによりさらに多くのお客に支持していただくことで収益を増やし、新商品やシステム開発への投資を通じてさらに質の良いサービスをご提供していく――という好循環を維持していくことは、健全な企業経営の根幹であるからだ。

しかしその一方で、株式公開によって大手各社が利益追求型となったとする、いわゆる"儲け過ぎ批判"というものもあった。その背景には私たちの努力不足もあったと思います。私たちは、お客に愛され続けるためにさまざまな努力を重ね、商売を通じてお客や社会に利益を還元していくことを自分たちの使命だと考えてきた。お客さまから支持される企業であり続けるためにも、消費者金融業における"適正利潤"のあり方について社会からの理解をさらに求めつつ、より広い意味で社会やお客のお役に立つ企業活動を続けていくことも、これからの私たちに課せられた大きな責務であると考えている。

業界をもっと知ってもらうための努力を

消費者金融業界は、お客の利便性向上という観点に立った商品・サービスの開発にたいへん大きな力を注いできた。自社ATMネットワークの拡充や、他業界とのCD・ATM利用提携の推進なども、時代の変化に合わせてお客さまの利便性を高め、それによって営業力と企業イメージの向上を図ることに目的があった。当社が1993年(平成5年)に業界で初めて設置した「自動契約機」もそのひとつだ。

自動契約機は、機械操作に慣れた若年世代に大いに受け入れられ、業界のイメージアップにも貢献してくれた。その反面で、自動契約機があたかも非対面で自動的にお金を貸す機械のようにとらえられ、 一部から大きな批判を浴びることになったのは非常に残念なことだった。機械を介しているとはいっても必ず担当者との直接のコミュニケーションがあり、設定した限度額以上にご融資するものではないことは店頭での審査とまったく同様だ。こうした点が広く理解していただけなかったこと、特に世論をリードする立場の方々に対する理解の浸透を図りきれなかったことはいまも残念に思うことのひとつだ。

それ以上に、消費者金融を上手に活用していただくための情報提供など、お客や一般消費者に向けての啓発活動には、業界としてもっと取り組む必要があったように感じる。お小遣いの管理に始まって、上手な家計管理や負債の管理は、基本的には消費者一人ひとりが自ら学び、自ら身につけていくべきものだが、私たちからも消費者金融の商品説明について、たとえば借入限度額とはどういうものであり、返済にはどんな方法があるか、どのように利用すれば経済的か、そして信用の蓄積とはどういうことか――といった情報や知識のご提供をどんどん行っていく必要がある。それがお客を大切にするということにも結びついていくからだ。どんな小さな家電製品にも懇切丁寧な取扱説明書があり、医薬品に使用上の注意が添えられているように、これは事業者側の社会的責務でもある。

もちろん私たちもさまざまな機会をとらえては、この業界を理解していただくための活動を展開してきた。ネガティブな側面ばかりが強調されるのは金融業の宿命といってしまえばそれまでかもしれない。だからこそ、他の産業と同じくらいのことをしていたのでは十分とはいえず、もっともっと時間と知恵を割かなければいけなかったという思いはある。金融業の持って生まれた定めとあきらめることなく、自分たちをもつと正しく知っていただくための努力を行っていくことにはこれからも終着点はないと考える。

努力次第で消費者金融業界はさらに発展する

今日まで、消費者金融業界の歴史はまさに問題解決の連続だった。まだ50年にもならない産業ではあるが、いつの時代にもさまざまな課題があり、それを解決しながら現在まで来たという実感がある。改正貸金業法の施行によって市場は壊減的な打撃を受けるという声も聞くが、社会にとって真に必要な産業であればどんな試練も必ず乗り越えていくことができるはずだ。法改正があろうとなかろうと、社会に必要のないものは残っていくことはできない。すべてはお客さまが消費者金融というサービスを必要とされるかどうかにかかっているのだ。実際、無担保の金融サービスに対するニーズがなくなることはなく、これからの各社の努力によっては、今回の法改正をいままで以上にお客さまを増やすチャンスに変えていけるかもしれない。私たちの努力次第で、業界はさらに発展する可能性を秘めているのだということを忘れてはならないと思う。

事実、消費者金融市場は過去幾多の試練や逆境に立ち向かいつつ発展してきた業界だ。数度にわたる金利引下げに対しても、努力によってこれを乗り越えてきた。これまでの経験を踏まえて言えば、新しい法律や制度が導入されて3年もすれば、新制度下での状態が当たり前のこととなる。今回の改正貸金業法の施行によって、市場の状況は大きく様変わりすることだろう。しかし、制度改革を経て旧来の状況に戻った産業などほとんどない。世の中は絶えず発展を続けており、進歩し、変化している。3年たてば人々は新しい状況を受け入れ、その中でスタンダードが生まれてくる。他ならぬ私たち自身がそれを繰り返し経験してきているのだ。

辛い、厳しいと言っているだけでは何も解決はしない。逆境にあるならば、そこでプラス思考に基づく反転を試みることが重要だ。その意味では、消費者金融業界で頑張り続けることもひとつの重要な選択なら、ここで市場から撤退することもまた勇気ある決断だ。どちらを選ぶにせよ、大切なのはプラス思考で明日を見るということではないだろうか。そうすれば、厳しさもまた価値あるものに転じていける――私はそう信じている。